中小企業診断士のブログ

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日本人の労働環境の異常さ

 

www.nikkei.com

『新卒や入社数年の若手社員の早期退職が目立っている。新入社員の4割以上が転職を検討しているという調査もある。深刻な人手不足が続く中、有望な人材をつなぎ留められなければ企業経営は揺らぎかねない。企業は入社後に若手をきめ細かくフォローする体制を整え、抱える悩みや感じるギャップに対処する必要に迫られている。2022年春にフィットネス関連企業に新卒入社した男性(25)は、同年秋ごろに転職を考え始め、23...』

 日本における労働環境特徴として、低賃金且つ長時間労働である点が挙げられます。それは、以下の3つのグラフから火を見るより明らかであることは疑いようがありません。昭和後期と比べると、労働時間自体は低下傾向にあるものの、依然として先進国の中でも、上位に位置しています。

 

 ただ、ここで最も深刻なことは、平成から令和の現在にいたるまで、日本人全体の賃金が全くと言ってよいほど上がっていないことです。労働時間が長いアメリカでさえ、30年で名目賃金は2.5倍に上昇しています。多くの会社勤めの日本人は、異常な労働環境に晒されているといってもよいでしょう。

 

図ー1:「一人当たり平均年間総実労働時間」

 

出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構

図-2:「OECD諸国一人当たり名目賃金の推移」

 

 

図ー3:「OECD諸国一人当たり実質賃金推移」

出所:内閣府「一人当たり実質賃金」

 賃金が低い上に、長時間労働となるともはや、人間関係の良好さや仕事のやりがいにモチベーションを見出さなければなりません。しかし、それも限界があるでしょう。そもそも、低賃金かつ長時間労働の環境の時点で、良好な労働環境なぞ作れるはずもありません。

 

 昨今では、記事にあるように新入社員の4割が転職を検討しているそうですが、先程のグラフ等を鑑みれば当然のことかもしれません。これまでの日本は労働者を虐待するような不文律を平然と保ってきました。残業の強制、上司からの恫喝、飲み会の強制、ハラスメントなどの数々です。そして、長時間労働と低賃金が加わってきます。

 

 国民、政治、企業は変わるべき分岐点に既に立っていることに気づくべきでしょう。