中小企業診断士のブログ

主に経済について

②コストプッシュ型インフレについて

 インフレにはデマンドプル型とコストプッシュ型の2種類に大別できるというお話をしました。今、世界中で発生しているインフレは、ロシア・ウクライナ戦争に端を発したコストプッシュインフレにあたります。

 

 コストプッシュインフレは、生産コストの上昇によって利益がより圧迫されるため、経済規模は縮小させる効果を持ちます。経済規模が縮小するインフレ下の環境にありながら、金回りを悪くする「利上げ」という金融政策は、タイミングとして悪手中の悪手といえるでしょう。

 

 ただ、デマンドプル型であれば、金利の上げ下げによって景気の調節が有効になりますが、今回のケースは金利を下げるにしても限界があります。(アベノミクス以降の低金利政策だけではデフレ脱却はできませんでした。)こうした不況下におけるインフレには、つまり供給不足によるインフレはどのような政策を打つべきかという命題が浮かんできます。

 

 その答えを単刀直入に言えば、足りない供給力を、「政府主導」によって強化することです。供給が足りない場合は、増やすしかありません。ただ、現状の日本社会の構造上、様々な制約が立ちはだかっています。

 

 現在の日本では、長引くデフレに、コストプッシュインフレが追い打ちをかけている状態であるため、民間主導で投資が増えることは期待できません。そもそも、デフレという経済現象に対して、市場原理のみ自浄作用の可能性は0でしょう。どんな経営者でも楽観的な将来予測なしに、大規模な投資判断は不可能でしょう。

 

 自然治癒が期待できない以上、政府による大規模な財政支出でしか解決できません。しかし、ここでも様々な制約に阻まれます。それが、財務省や主流派経済学者、マスメディアが声高に訴える財政均衡論の存在です。次回以降どこかで、この財政均衡論の間違いについて説明したいと思います。