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コストプッシュインフレについて

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 物価の上昇は、大きく分けて需要牽引型とコスト上昇型の2パターンに分けられます。前者の需要牽引型は、需要が供給を上回る時に発生します。

 

 旅館業等のレジャー関連の事例で考えると理解しやすいかもしれません。今年のGWは本日が最終日ですが、こうしたシーズンには消費が集中するため、宿泊施設の値段は需要に応じて上昇します。逆に、シーズンオフ期には、消費量は低下するため、価格を下げることが合理的になるでしょう。このパターンは誰でも容易に理解できるでしょう。この需要牽引型のインフレは、健全な資本主義経済の発展にとって不可欠です。ただ、この需要が過熱しすぎて過度なインフレになることは避けた方がよいでしょうこうした需要牽引型のインフレを抑える手段として、いわゆる「利上げ」が有効になります。即ち金融機関からの借り入れコストの上昇を意味するため、その分金回りは抑えることに繋がります。

 

 一方で、コスト上昇型のインフレは、政策的に正しい手段は全くといって良いほどことなります。コスト上昇型インフレとは、簡単に表現すると、生産コストの上昇のことです。原材料や資源価格等の資源インフレ、人手不足による賃金インフレ等を指し、いわゆるサプライサイド要因によるインフレです。同じ売上でも、コスト上昇分の利益が逼迫されることになるため、最も悪質なインフレと言えるでしょう。このコストプッシュ型のインフレが長引いた場合、経済規模は確実に縮小するでしょう。

 

 では、現状はどちらのインフレなのかというと、後者のコストプッシュ型インフレになります。ただ、日本に限らず、2022年のロシア・ウクライナ戦争を契機に、世界中でコスト上昇型のインフレが進行しています。連日の報道される、食品物価の上昇や為替の円安の要因は、その延長線上にあることは間違いありません。

 

 ここにきて、本日の日経新聞記事のような、日銀利上げ論が浮上しています。果たして、現下のコストプッシュ型インフレが進行する中で、金回りを悪くする利上げが必要なのでしょうか。答えは、単純明快でNOです。コストプッシュ型のインフレは、不況にみられる現象だからです。要は、日経新聞や多くのメディアは、インフレには種類があることを理解していないのです。不況にもかかわらず、景気を悪くする政策が正しいわけがありません。

 

 日本経済の構造はエネルギー等の資源、食料といった安全保障上不可欠な分野において、多くを海外からの輸入に依存しています。日常生活に欠かせない、エネルギーの自給率は、2020年度で僅か11%と、OECD諸国37ヶ国中36位という驚異的な低さを長年続けてきました。また、食料自給率(カロリーベース)でも、38%という低さとなっています。何かしら、大規模な地政学リスクが顕在化し、国際貿易がとまると、我々日本人は日常の生活が瞬く間にできなくなるでしょう。

 

 では、この状況を打破するためには、何が必要かを明日に考えたいと思います。